ARCO35「アルコ35 オートマット」

クラシックカメラを買いました。
このカメラはずっと前から欲しいと思っていたのですが、程度の良いものや価格が合うものがなかなか見つからなかったので諦めていました。
最近になって価格と程度がそこそこ良いもを見つけましたので、早速お迎えしました。
古いカメラは出会いが大切だと思います。
それでは、じっくり見てみましょう。
アルコ写真工業というメーカーから1956年に発売された、日本初の国産スプリングカメラです。
スプリングカメラとは、レンズシャッターユニットを本体内に折り畳む事がでるカメラの事です。
1952年に発売された初期型「アルコ35」をセルフコッキング化、ファインダーを等倍とした改良型になります。
当時のスプリングカメラの多くは、シャッターチャージを個別にする必要がありましたが、このオートマットではフィルム巻き上げと同時にシャッターをチャージします。
レンズシャッターユニットを折り畳むと、このようにコンパクトに。
前フタ上部にあるぽっちをスライドさせると、スプリングの力でユニットがせり出しロックされます。
この事から、スプリングカメラと呼ばれています。
カチッと精密な音を出してユニットがロックされるのはとても心地よいです。
スプリングカメラは値段もお手頃な物が多く、見た目もかわいいのでカメラ女子にも人気があるようです。
手のひらに収まる、とまではいきませんが、金属のずっしり感や精密感があり、メカ好きにはたまりません。
ずっと触っていたい気がします。
当時としては多機能でギミックも多いですが、作りに無理が無いらしく、堅牢でしっかりしています。
横から見ると、スプリングカメラの特徴でもある「蛇腹」が見えます。
この蛇腹を折り畳む事でコンパクトに収納できるというわけです。
ピントダイヤルを回すと、ユニットの蛇腹がこのように前後します。
アルコ35の最大の特徴はこのピント機構にあります。
ファインダーとレンズが別々で、距離系内蔵カメラをレンジファインダーカメラと言いますが、レンジファインダーカメラの"最短距離"は、現代のカメラを含めても良くて70㎝、一般には1mと長いものです。
これでは道ばたに咲いている小さな花や、テーブルの上の小物などに寄れませんので、小さな被写体を大きく撮る事ができません。
もちろんfigmaやねんどろいども撮れません!(ここ重要w)
しかし、このアルコ35はレンジファインダーカメラにもかかわらず、最短距離が35cmととても短いのが特徴です。
裏から見て、左にあるダイヤルがピントダイヤルになります。
このダイヤルを回すと、レンズユニットの蛇腹が前後してピントが合います。
とても軽い力で滑らかに回す事ができ、当時の職人さんの拘りを感じます。
アルコ35の特徴は35cmの最短距離と言いましたが、レンジファインダーでこの最短距離を実現するには、パララックスを補正する必要があります。
パララックスとは、ファインダーに写る視野と実際にレンズに写る視野が違うという現象です。
ファインダーとレンズが別々なので当たり前の現象ですが、近接になればなるほど著しくなります。
そこで、軍艦部に乗っかっているビューファインダーの出番です。
左にあるダイヤルでピントを合わせ、その目盛り(距離)を見てビューファインダーにあるダイヤルを回すと、補正された構図を確認する事ができるという仕組みです。
あくまでも目安なので誤差はあるし、当時のファインダーなので見にくいです。
横から見たビューファインダー。
左が無限位置で、右が最短距離です。
このように可動してパララックスを補正するわけです。
このビューファインダーを別売りの「ビューアルコ」という特殊なファインダーに替えると、もっと見やすくなりますが、ビューアルコはコレクターズアイテムなので稀少でとてもお高いです。
フィルム室です。
現代のフィルムカメラと大差ありません。
約60年前のカメラとは思えないほどフィルムの装填はやりやすいです。
そして、フィルムカウンターは自動復元順算式で、当時としては最新でした。
また、巻き上げも「分割巻き上げ」が可能となっています。
実は、アルコ35姉妹で末っ子の「オートマット"D"」も持っています。(写真右がD)
カビありのジャンク品を数千円で購入しましたが、動かしてみると機関は生きているので、オーバーホールに出してもいいくらいです。
とりあえず外観だけは綺麗に磨いてあげました。
一見するとあまり変わりませんが、グッタペルカ(張り皮)の模様が違うのと、レンズがf2.8からf2.4と明るいレンズに変わっています。
※アルコ35姉妹は大まかに4機種出てます。
1952年、アルコ35
1955年、アルコ35J
1956年、アルコ35 オートマット
1956年、アルコ35 オートマットD
レンズのアップ。
左が無印f2.8で右が"D"のf2.4のレンズ。
一目見ただけでも、右のf2.4のレンズの方が良く写りそうな感じがします。
小心者の自分は保護フィルターを付けたくなりますが、レンズ枠にネジ切りが無いため一般的なフィルターは付けられません。
有名なスプリングカメラ、ドイツの「レチナⅡa」との比較。
コンパクトさではレチナⅡaですが、"最短距離"という特徴からアルコの方が好きです。
また、アルコは日本産の心遣いと言いますか、使う人の事をよく考えられていて好感が持てます。
オートマット"D"用の純正革ケースを付けてみました。
ケースにストラップが付けられるので便利です。
好きなカメラの話しなので、ついつい長くなってしまいましたが、今回はここまでにします。
今度は休みの日にアルコを連れ出し、ゆっくり撮り歩きをしてみたいと思います。