フィギュアの撮り方/基本編「被写界深度と絞り」
フィギュア写真の撮り方、今回は被写界深度と絞りについてお話します。
カメラの設定は、絞りを任意に動かせる「絞り優先」で話を進めます。
カメラのモードダイヤルを"A"とか"AE"とかに合わせてください。
TOPの写真は後半で触れるとして、早速開始です。

まずはこの写真から。
雪ミクかわいい!////
もとい!この写真は二人のミクを「絞り開放(F1.4)」で撮ったもの。
ピント位置は向かって左のミクの瞳に合わせてあります。
右のミクにはピントが合わず、甘い描写になっています。
では、二人のミクの位置関係を見るため、上から撮った写真を見てみましょう。

向かって左のミクの方がカメラに近く、右側のミクは後ろに下がっているのがわかります。
ピントは左側のミクの瞳に合わせてありますので、そのピント面より前後のものはボケてしまうことになり、左側のミクにピントは合いません。
では、二人のミクに同時にピントを合わせるには、どうしたらよいのか。
一番簡単なのは、向かって右側のミクを、ピントの合わせてある左側のミクと同じ距離にする事ですが、構図やシチュエーションによって距離を揃えられないことがほとんどです。
そこで、「絞り」を操作します。

こちらの写真は、絞り値を「F1.4」から「F4」に変更して撮ったものです。
二人のミクにピントが合いました。
絞りは元々光の量を調整するためのものですが、今のカメラは優秀なので、それほど難しく考えなくても大丈夫です。
数値が小さいほど光が多く入り、数値が大きくなると絞りが絞られ光の量が少なくなります。
それと同時に、ピントが合っているように見える範囲が変化します。
このピントが合っているように見える範囲を「被写界深度」といいます。
被写界深度は、絞りの値が大きくなるほど深くなります。
よって、今回のように絞り値「F1.4」から「F4」に絞り値を変えることで、被写界深度が深くなり、ピントの合っているように見える範囲が広まったということになります。
もう一度上から見た写真を見てみます。

黄色い範囲がピントの合っている範囲(イメージ)です。
絞り値の小さい「F1.4」の方が被写界深度が浅くピントの合っている範囲が狭いです。
値「F4」の方は、「F1.4」に比べて範囲が広くなります。
数値が大きくなるに連れて、この黄色い範囲も広くなっていきます。
※被写界深度は絞りのほか、カメラのセンサーサイズやレンズの焦点距離によっても変化しますが、それはまた別な機会にお話します。
それでは、もう少しわかりやすいように、二人のミクの位置をずらして絞り値を変えながら数枚撮ってみました。

絞り値「F1.4」
ピント位置は、向かって左側のミクの目です。
今回使用したレンズの絞り最小値はF1.4のレンズなので、この値が絞り解放状態になります。
レンズによって最小値が違い、一概には言えませんが最小値が小さいほどレンズの造りも大きくなり、高価なレンズになっています。

絞り値「F2.8」
「F1.4」と比べて、後ろにいるミクが少しはっきりしてきました。
それだけ被写界深度が深まったということです。

絞り値「F5.6」

絞り値「F8」

絞り値「F16」
いかがでしょう、絞り値が大きくなる(絞りを絞る)ほど被写界深度が深くなり、ピントの合っているように見える範囲が広くなっていきます。
このレンズの最大値であるF16まで絞ると、背景に使用している後ろの紙質までわかるようになりました。
では、絞るほど被写界深度が深くなり、全体にピントが合うように見えるので、絞った方がよくね?
と思われるかもしれませんが、そうではありません。
デコマス撮影やCM写真などは、商品のでディテールをしっかり出すため絞ることが多いと思いますが、情景写真などはなるべく絞らない方が雰囲気が出ます。
また、基本的に絞れば画質も向上しますが、ある値を超えると回折現象により逆に画質が低下します。

ミクの顔を拡大してみました。
左が絞りF5.6の時で、右がF16の時です。
絞りを絞れば画質が向上し、ピントの範囲も広がるはずなのに、
F16の方はモヤっとしていて画質が劣化しているのがわかります。
これが回折現象です。
回折現象の原理はここでは触れませんが、レンズやセンサーサイズでも微妙に変わってきます。
今回使用したカメラはマイクロフォーサーズで、レンズは25mm F1.4の標準レンズです。
このレンズはF8を超えたあたりから明らかに画質の劣化が見られます。
しかし、画質よりも雰囲気重視の「情景写真」の世界では、あまり気にせず状況に合わせて使っていきましょう。
「絞り過ぎはよくない」と頭の片隅に置いておく程度でいいと思います。
さて、次に作例を紹介します。

絞り値「F2.0」
大自然の村、カムイコタンに訪れる短い夏、というイメージで撮ってみました。
少し涼しいと感じるほどのカムイコタンの短い夏、村の里山に優しく降り注ぐ日の光、二人の巫女は動物たちと何を語らうのでしょうか・・・・・・。
という設定ですw
(年齢がバレそうww)
それは置いておいて、いかがでしょう、雰囲気出ているでしょうか。
絞りをなるべく開けて(小さい数値)で、ピント面以外を穏やかにボカすのがコツですが、被写体とレンズの間に木々の葉を写して「前ボケ」を出してみました。
木々の葉は100均の造花ですので、絞りを絞って全体にピントが合ってしまうと、造花の安っぽい質感まで写ってしまいますので、なるべく絞りを開けて、いかにボカすかが重要ですw
ピント面である二人のミクの顔(瞳の位置)は寝転んでいるので同じ距離になっています。
こうすると絞りを絞らなくても二人の瞳にピントがあいますので、絞りは心置きなく開く事が出来ます。
どこまで絞りを開けるか、正解はありませんので、感性にゆだねましょう。
自分がいいなと思った所でいいと思います。

こちらが撮影状況ですが、上部にある木の造花をレンズに掛かるようにして撮りました。
あとは、造花だけを手で揺らしながら撮ったりすると、もっと雰囲気が出るかもしれません。
次に、TOPの写真について説明します。
まずは、撮影状況から。

これも、自称「カムイコタンの森」をイメージしたものですが、100均のマテリアルをゴソッと置いただけです。
右奥の木は、近くの山で拾ってきた小枝です。
改めてTOP写真を見ていただくと、この状況からどうしてあのような写真になるのか不思議だと思いませんか。
そこには、被写界深度と絞りが大きく影響しています。
TOP写真を撮ったときの絞り値は「F2.8」
このとき使用したレンズは最小値がF2.8のマクロレンズでした。
ゆえに、絞りは解放で撮っています。
絞り値が小さい(絞りを開く)と被写界深度が浅くなり、ピント面以外は大きくボケてきます。
なので、適当に置いた背景でも、"それっぽく"写りますし見えます。
この状況で絞りを絞って撮ると、100均の造花がただ単に無造作に置いてあるだけの写真が撮れますw
人間の脳は、それっぽい形があると、脳内でディテールを組み立てますので、背景をくっきり写す必要はありません。
というか、背景を写しすぎてしまうと主題が散漫となり、折角の雰囲気が壊れていまいます。
自分も、気合い入れて背景を作った場合、どしても背景を写し込みたくなり絞りを絞ってしまいます。
もちろん、意図的に背景を取り入れた構図を決める場合もありますので、一概には言えませんが、なるべく絞らない方が雰囲気ある写真が撮れると思います。
次に、被写界深度は接写になるほど浅くなります。
接写で絞り開放(F2.8)で撮ったミクですが、figmaの小さい顔でもこれだけボケます。
左目の一部にピントを合わせると、奥にある右目がボケます。
絞りを絞ると被写界深度が深くなり、ピントの合う範囲が広がりますが、絞り込むことでふわふわ感が無くなりますので、どこまで絞るかは感性次第です。
絞り値「F2.8」
顔の大きな「ねんどろいど」だとボケ方がよくわかります。
絞り値「F8」
絞りをF8まで絞ってみます。
奥の瞳にも若干ピントが合ってきました。
これ以上絞ると雰囲気や立体感が損なわれそうでしたので、絞るのはここまでにします。
デジカメは写真を何枚でも撮れるので、気になったら同じカットを絞り値だけずらして撮っておくといいと思います。
以上、今回は長くなりましたが、なるべく絞らないようにすると雰囲気出ますので、是非やってみてください。
次回はいよいよ、ライティングのお話です。(予定)
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