フィギュアの撮り方/実践編「屋内Part 1」

前回製作しました「屋内背景」を使用して、フィギュアの情景写真を撮ってみたいと思います。
被写体はfigmaの"加賀"さんです。
今回は窓を入れない(窓の外を写さない)ライティングです。
次回「屋内Part 2」では、窓を入れたライティングについてお話したいと思います。
それでは、一枚目の写真のように一つの光源を正面に設置して、撮ってみます。
いきなり悪い例を挙げましたが、ライティングの基本編でもお話したように、光源を正面に置いて順光で撮るのは情景写真としてお勧めできません。
見ての通り雰囲気も立体感も感じられません。
光源位置が若干上なので、真っ正面の順光よりはまだマシですが、それでも、雰囲気が良くないですよね。
せっかく製作した背景もこれではもったいないです。

それでは、しっかりライティングをしていきたいと思います。
分かりやすいように、光の道筋を黄色の線で表現してみました。
ライティングをするときは、このように光の線をイメージすると分かりやすいと思います。
せっかく窓付きの背景を作ったのですから、窓から入る光を表現してみましょう。
まずはライティング基本編で説明した斜光を使います。
光源の位置は被写体に対して斜めにセッティング。
光の線①で窓を通して背景の壁に光を当てます。
光の線②は、暗くなる被写体の顔を明るくするため、光源から零れる光をレフ板で拾って被写体の顔に当ててます。
光の線③は、光源から零れた光を直接背景に当て明るさを補っています。
背景が明るくなりすぎると①の光が薄くなり雰囲気が出ませんので、ここでは一番明るい光が①であるようにセッティングします。
光源から零れる光②③を、本来なら壁がある部分から集めているので、不自然にならにように壁下を遮光しました。
今回は窓は写さないので、この位置にもう一枚窓があるというていで光を通過させても良いと思います。
このように、一つの光源の光を上手く利用すると自然なライティングが出来ます。
※一つの光源で光りが補えない場合は、光源を複数使用しますが、今回は分かりやすいように全て単光源で撮ります。
この状態で撮ったのが次ぎの写真です。
いかがでしょう。
屋内に差し込む暖かそうな光が表現できたと思います。
構図も、光の写る空間を多めにとって、雰囲気を出します。

続いて、光源の位置をもう少し横(側光)にしてみます。
側光は斜光より明暗が強く出ますので、少し緩和するためディフューザー(ティッシュやトレーシングペーパーなど)を被写体と光源の間に設置するのが良いですが、造花などを窓の外にセットして光りを拡散することも可能です。
今回は窓の外を写さないので造花は見えませんが、造花の影が僅かに写り雰囲気が出ますので、造花が見えなくともディフューザーとして使う場合が多々あります。
光の線①は、造花を通して拡散させながら被写体へ当てます。
光の線②は直接床に当て、アクセントを持たせます。
光の線③はおなじみのレフ板、反射させて被写体の顔を明るくします。
この状態で撮ったのが、次の写真です。
いかがでしょう。
強めの明暗と、造花が作り出す僅かな影が写り込み、ドラマチックに仕上がったと思います。
このように明暗を出すには「照明の特性」でお話した指向性のあるLEDが有利になります。
自分が好んで使うのも、この指向性があるLEDです。

続いて、窓を少しフレームに入れて、でも窓の外は写さないように撮ってみます。
今までは、光源から零れる光をレフで受け止めて使っていましたが、今回はよりリアルに、窓から入ってくる光のみで撮影します。
一番自然な雰囲気が出ますが、窓からの光のみですのでとても暗く、シャッター速度がかなり落ちます。
この状態だと、絞りF3.6でシャッター速度1.8秒です。
1.8秒じっとしていないといけないので、ブレに注意です。
※手持ちでは不可能。
また、暗いので、レフ板は2枚使いました。
窓のみの光で撮ると、より自然な雰囲気が出ると思います。
ちょっと話が逸れますが、前に「色温度」についてお話したように、写真の色温度を下げると、夕日の演出もできます。
撮った後に色温度を変更しました。
撮影時にカメラ側で設定もできますが、カメラを買った時に付いているソフトで大抵の事はできます。

続いて、最後ですが、もっと複雑なライティングを見てみましょうw
前の例で、自然な感じの写真も良かったのですが、やっぱりなんとなく物足りません。
後ろの壁が殺風景で、被写体にももっとドラマが欲しい!
そこで、レフを追加していきます。
光の線aは、造花を通り拡散しながら被写体に明暗を落とします。
光の線bは、レフ板①に反射してそのまま被写体後ろの壁に明暗を写します。
光の線cは、窓から侵入した僅かな光です。レフ板②で拾って被写体の顔を明るくします。
光の線dは、cと同じく窓から侵入した弱い光。レフ③で拾って被写体の腿から足下を僅かに照らします。
こうやって書くと複雑そうに見えますが、足りない部分を補っていくだけですので、実際にやってみるとそうでもありません。
ここが暗い→じゃあレフを追加しよう。
ここが明るすぎる→じゃあ造花(ディフューザー)で減光しよう。
ここが寂しい→じゃあ影を落とそう。
という感じです。
この状態で撮ったのが次の写真です。
加賀さんの柔らかそうな首筋に当たるふわっとした光、僅かに揺らいでいるように感じる明暗、背景に写り込む光、そして、主張しすぎない絶対領域!絶対領域!(なぜ二回言った)
ちょっと脱線しますが、この写真のように「表情を隠して表情を作る」という撮り方も自分が好きな技法です。
さて、今回はここまでです。
正直、ライティングには正解などは無く、感性次第という所でしょうか。
光源の角度やら、レフの位置、明暗の演出なんて無限の組み合わせがあるわけで、今回お話ししているライティングも一例に過ぎません。
実際にセットを組んで光りの道筋を見るのが一番良いと思いますし、楽しいと思います。
是非チャレンジしてみてください。
次回は、同じセット、同じ雰囲気で"窓"を写してのライティングについてお話します。
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